山茶花
よそんちの花シリーズ「山茶花(さざんか)」。
まるで白い花のクリスマスツリー。
道路の角で、ひときわ存在感を放つ一本の山茶花。
白い花びらは「可憐」などという言葉では追いつかず、
むしろ――押し寄せるような生命の奔流そのもの。
山茶花は、古くは『古今要覧』に「寒咲きの椿」と記され、
冬の冷気にもひるまず咲き続ける強さを持つ花。
花言葉のひとつは「困難に打ち克つ」。
たしかに、この木の佇まいはその言葉をそのまま形にしたようだ。
枝という枝にみっしりと結ばれた蕾は、
寒さを押し返すようにふくらみ、
白い花は、零れるのではなく、あふれ出す。
静かな路地を埋め尽くすほどの、凄まじい生命のエネルギー。
冬の入口で咲く山茶花は、
「どんな季節にも、命は前へ進む」という
自然からのひそやかな宣言なのかもしれない。
今日、この一本の木の前で足を止めたのは、
強さと優しさが同時に迫ってくるような
そんな圧倒的な白の気配に、
心が打たれたからだ。


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