金木犀
自分ちの花シリーズ「金木犀(きんもくせい)」。
荒れ果てた実家の庭。
それでも、いくつかの花木は黙って季節を繋いでいる。
門扉を開けた瞬間、ふと甘い香りが風にのってきた。
見上げれば、オレンジ色の小さな花がびっしり。
いつの間にか、こんなにも咲いていたのか。
主(母)のいない家を前に、金木犀は「我関せず」と咲いているのか。
それとも、寂しさを香りに変えているのだろうか。
春は沈丁花、夏は梔子、そして秋の金木犀
――三大香木の一つとして、ひとときだけの命を輝かせる。
やがて散り、その花びらが路面を金色に染めるだろう。
思い出すのは桂花陳酒。
「また酒の話か」と笑われても、
この香りを味に変えようとした人の知恵と執念には、
どこか救われる。
人にはもう秋が消えたように思えても、
植物たちはちゃんと知っている。
今が、秋だと。


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