ヤブラン
山野草シリーズ「ヤブラン(薮蘭)」。
「破らん」ではない。
「藪」の中でひっそりと「蘭」のような花を咲かせるから「ヤブラン(藪蘭)」。
先日登ったに玄界灘に浮かぶ玄界島遠見山の山道に咲いていた可憐な花。
ヤブランは夜が涼しくなると待ちかねたように花を咲かせる。
灼熱地獄が続く下界と違って、島の森の中にはもう秋が到来しているのだ。
ヤブランは万葉の時代から「やますげ(山菅)」と呼ばれていたそうで、万葉集にはたくさんの歌が詠われている。
山菅(やますげ)の 乱れ恋のみ せしめつつ
逢はぬ妹(いも)かも 年は経(へ)につつ
~柿本人麻呂歌集(巻十一 二四七四)
(山菅の根のように思い乱れた恋ばかりさせておきながら、あの子は一向に逢ってくれない、年月ばかりがいたずらに過ぎてゆくというのに)
人麻呂は万葉集第一の歌人と昔学校で習ったが、彼の歌を今改めてちょろっと見てみると、讃歌や挽歌もあるが恋歌が多い。
要するに頭の中は色恋ばかりだったように見える。
実際共寝をはじめ性的な表現が目立つし、多くの妻妾を抱えていたもいわれる。
あるいは彼の脳内には妄想たくましい恋物語が年から年中溢れていたのかもしれない。
人麻呂と私の違いは、それをもっともらしく言の葉に紡げるかどうかの違いだけではないか(それが難しいが…)。
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