Bar雑感
Bar雑感。
日本のバーは、単なる酒場ではなかった。
明治の開港とともに流入した西洋文化は、
昭和初期の銀座で静かな成熟を見せ、
戦後の復興と高度経済成長のなかで職能として制度化された。
1951年設立の「 日本バーテンダー協会(NBA)」 は、
技術を競技へ、経験を体系へと昇華させた。
1980年代、オーセンティックバーは一つの完成形に達する。
沈黙のカウンター、磨き上げられた氷、
客より前に出ない所作。
それは欧米型の社交とは異なる、
日本的な「静寂の様式」だった。
いま、60余年続いた先輩の一軒が幕を閉じる。
それは経営の終わりというより、
高度成長期以降の精神様式の終焉かもしれない。
巷には、打ち上げ花火のように、SNS情報が飛ぶ。
息づいてきた鼓動は減って、文化の密度も消えてゆくのだろうか。
Barのみならず、
問われているのは、継承の構造そのものなのだろう。




